街を彩る、ヒト・モノ・コトを結ぶ[ミレア]

横浜・みなとみらいエリア

みなとみらい21フリーマガジンmirea(ミレア) mireaマガジン連載企画

アートのそよかぜ

儚い花模様がゆれる、入浴するアート

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日の出駅近くに、古い旅館を改装したアートスペース、竜宮美術旅館があります。
ここには、大正ロマン風とでもいうのか、一風変わった浴室があり、その浴室に映像を投影する作品が設置されているというので、併設のカフェでお茶がてらに出かけてきました。
浴室には女性のヌードが彫刻されたアールヌーヴォー風の磨りガラスがあり、小さなタイルとドーム型の天井が異国情緒をかもし出しています。扇形をした浴槽はミルク色のお湯で満たされていて、その水面に花模様の影がゆらゆらとゆれています。
水面をスクリーンにみたて、映像が映し出されているのです。ふと、天井をみあげると、そこにも水面の反射により映し出された花模様が。この作品、なんと入浴することができるのだとか。アーティストは横浜在住の志村信裕さん。
秋のアート鑑賞にぜひ出かけてみてください。

 

<アーティスト志村信裕さんにインタビュー>
 
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——作品を展示している黄金町エリアでは、以前は路上に赤い靴を投影する作品を制作されていました。今回はどうしてお風呂をなんですか?

志村:黄金町で作品を発表するのは3年目なのですが、せっかく街中でやるので今年は今まで以上に人が関われる作品を作りたいと思ったんです。

今までも道路などで通行人やここに住んでる人に見てもらえて、作品と街の人の距離が縮むきっかけになる作品を作ってきたんですけど、もう少し、地元の人だけではなくて、外から来た人が関わって楽しめるものを考えていました。なにかもっと、日常に近い感じで見せられないかなと思っていて。美術展のためのだけのアート作品というよりも、生活の延長線で作品に触れてもらうことができないかなと。

今回展示している竜宮美術旅館は昨年9月にオープンして、去年の黄金町バザールの目玉になった場所なんです。今年は滞在制作期間と9月2日からの展示期間に分かれていますが、僕の場合は最初から地元作家として、ディレクターに8月6日(黄金町バザールのスタート)から見れる作品を作ってほしいとオーダーを受けていました。スタートから見せれる作品だから、新規に新しい場所を作るのではなくて、既に黄金町にあって、特徴をよく知った場所を使ってやりたいなと。そこで、目をつけたのがここのお風呂場でした。

この建物を改装したときに湯沸かし機までせっかく直したんですけど、誰も入らないし、入るきっかけさえもない状態だったんです。ただ、お風呂場としては面白くて、みんな見学すると面白がってくれる。ガラスの裸のレリーフとか、タイルとか、天井の造りも面白くて。ほんとはフラットでいいんですけど、恐らく少しでも高く見せようとして、ドーム型にしてある。そういう細かいディティールを見せるだけでも面白いなと思っていて。なおかつ、鑑賞者がお風呂に入れるっていう仕掛けをつくるにはどうしたらいいかを考えました。

僕はいろんな街に潜在的にあるものをスクリーンに見立てた作品を今までつくってきたんですけど、今回は浴槽の湯船をスクリーンに見立てたら、作品体験を口実に人が入浴できるんじゃないかなと思いつきました。

——映像になっている花模様のモチーフはなんですか?

志村:あれは白いレースの生地を実際に撮影したものです。だから白いレースの隙間の部分が黒くなっているんです。お風呂に映像を映して、そこで完成ではなくて、人が入ることで完成する作品にしようと最初から考えていました。そう考えた時に服を脱いで裸で入浴するということが、すごく大事だなと思っていて。

——鑑賞体験としてはかなり鮮烈ですよね

志村:そうですね。一番無防備な状態にさせられますからね。
肌に直接映像が映るというのが面白いなと思って。そこでぱっと浮かんだのが入れ墨でした。人が自分の体に柄とかモチーフを入れるのと一緒で、お風呂に入った時だけ疑似体験で、自分の体が絵や模様に染まったら楽しいんじゃないかって。

それと同時に黄金町の歴史を振り返ると、実際に入れ墨を入れていた人達がいたという消えない歴史もあります。人をお風呂に入れさせたいという気持ちで作り始めた作品なのですが、かつての旅館に残された浴槽と街の歴史が僕の中ではつながったんです。そして入浴した人はみんなやっぱり入った時に「入れ墨みたい」って言うんです。

——それは先に話をしていない状態で?

志村:そうです。みんな肌に花とかが映るとそういう連想をするんですよね。ただ、入れ墨といっても本物の入れ墨をモチーフにすると直接的すぎてしまう。それを、もうすこし僕らしいやり方で入浴した時にしか分からないような見せ方にしようと思って考えたのが白いレースのイメージだったんです。一見、入らないと白いレースの模様が奇麗に見えますよね。

——そうですよね、女性的な印象ですごくフェミニンですよね。

志村:モチーフも女性的なものなので。
けれど一転、入ると全く別の顔になってしまう。黄金町に残っている小さな家の窓にレースの可愛いカーテンがかかっているのをよく見かけたんですが、その中で起こっていたことはそんな可愛らしいイメージとは全く別のものだったように。

——見るだけでもすごく面白い作品なのですが、入浴した時と、作品の見え方がかなりジャンプしていると思いました。どういうふうに見てもらいたいという希望はありますか?

志村:この作品に関しては割り切っていて、実際に入った人にしか分からないと思っているんです。入浴するのは一晩、一組限定にしているんです。衛生面もありますが、体験者全員に一番風呂を体験してほしいからです。人によっては見るだけだと30%、入ってやっと100%になると言う人もいました。まさに、僕が今回やりたかったことはそれだなと思っています。

特に今回、ヨコハマトリエンナーレという国際展と同時期にやるという中で、僕が黄金町で作品を見せる意義はそこだと思っていて。

ヨコハマトリエンナーレには世界中からいい作品が一堂に集まってくるんです。ヴェネチア・ビエンナーレで注目を浴びたクリスチャン・マークレーの最新作だったり。ただ、悪い面をあえて言うとしたら、どんどん世界が平均化してしまうとも言えます。たとえば海外の有名ブランドが日本に上陸してくるというような。お金を出して、世界中から良質な作品をもってきて、それを何十万人もの人が一度に体験するという構造の中で、僕の作品は一日一組限定なので、期間中に100組も体験できないんです。その100組にも満たない人達と入っていない人達のあいだには差ができちゃうんですけど、それが面白いなと思っていて。どうしてもハードルがあるんですけどね。

——平均化じゃない、差別化ですね。

志村:要は自分が受け身だと入れない。面白がってくれて入りたいってなると、そこで一気に作品と近づけるというか。

——入浴って、ちょっとハードルが高いかなと思うんですが‥‥。

志村:アート作品が街中に展示されることが特別なことではなくなってきたからこそ、ハードルは高い方が面白くなると思っています。
だけど今、ほとんど毎日予約がはいっていて、女性の希望者の方が多いんですよ。
 

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黄金町バザール概要
展示期間:開催中−11月6日(日)
会場:京急線「日ノ出町駅」から「黄金町駅」間の高架下スタジオ,周辺のスタジオ,既存の店舗,屋外空地,他
入場料:黄金町バザール2011(一部会場のみ)会期中有効のフリーパス
高校生以上:500 円/中学生以下:無料

志村信裕《lace》
展示場所:竜宮美術旅館
会期中、毎晩一組のみ入浴可能。入浴時間は19:30-21:00。
竜宮美術旅館内カフェ「L CAMP」にて予約受付中。
休場日:9月の毎週木曜日、10月13日(木)、10月27日(木)
http://www.koganecho.net/
 

2011/09/20

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