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みなとみらい21フリーマガジンmirea(ミレア) mireaマガジン連載企画

カタチあるモノ

三浦郡葉山町 ビーチサンダル専門店「げんべい商店」のビーサン

カラフルなビーチサンダルが勢揃い。ずらりと並ぶ色の華やかさに圧巻。色彩豊かなビーチサンダルを見ていると、ファッションに合わせて揃えたくなる。夏が待ち遠しい!

初代、源兵衛氏が葉山で小売りをはじめてから150年の歴史を持つ「げんべい商店」。今やビーチサンダルといえば「げんべい」という圧倒的な存在感がある。現在5代目の店主、中島さんに話を聞いた。「僕にはトラウマがあるんですよ(笑)。数年前、友人と飲んだ帰り、逗子駅から乗ったタクシーの運転手さんに、げんべいまでお願いしますと言ったら、知らないと言われて。それから怖くて、げんべいまでって言えません(笑)」。今でこそ中島さんは笑いながら話してくれるが、店を任されてからの数年は迷いがあったという。

そうだ、うちはビーサン専門店なんだ!
 かつて建設会社の営業マンをしていた中島さん。跡取り娘純子さんとの結婚を機に、すでにあった一店舗を任されることになった。それが今から12年ほど前にさかのぼる。「紳士用と婦人用の肌着や靴下などが並び、ビーサンはそのなかの一部という感じで万屋みたいでした」。中島さんが書いた本「ビーサン屋げんべい物語」に『近所の人が"げんべいで買い物をするところを見られるのは恥ずかしい"と言っているうわさを聞いたのもこの頃でした』と綴られている。「店に来ていたコンサルタントの人にいろいろアドバイスをもらい右往左往するのですが、どうもパッとしない(笑)。自分なりに考えはじめ、そこでハタと気づいたんです、うちはビーサンが売りの店なんだと。わざわざ買いに来たとか、何年も履いてるとか、ビーサンはここでしか買わないとか、お客さんは皆、うちのビーサンを評価してくれていることに気づいたんです。ただ悲しいことに1年中、店を開けていても結果がついてこない。よし、それならもう自分がやりたいことをやってみようと。そこからです、ビーサンをメインにしていきました」。

家族でやっている店がどこまでできるか
 ビーチサンダル専門店という道筋を決め、2001年にHPを立ち上げる。その時に作ったのが、マルのなかに「げ」のひと文字が入ったロゴマークだ。こうした変化と質の良い品揃えにいち早く気づいたファッションブランドからコラボの声が掛かる。「コラボしましょうって言われてもピンとこなくて(笑)。最初の年は断ったのですが、翌年の夏、また来てくれて実現しました。それから、いろいろなところから声を掛かるようになりました。ただ僕はひねくれ者なので、人を見てしまう(笑)。極端なことを言うとお金儲けにあまり興味がない。どれだけ人と面白い仕事ができるか、そっちの方が気になるんです。お金の苦労は万屋と言われた頃に十分味わったから怖いものはないです」。今後の目標を聞いた。葉山の片隅で、家族でやっている店がどこまでできるのか、気づいたら世界を相手に商売をしていたら面白いと答えてくれた。

中島さんに聞いた「あなたにとって恋とは?」                                                                                                                                                             人に恋するより、事やモノに恋しますね(笑)。仕事に恋したり、ビーサンに恋したり。ここでビーサンが売れたら良いなという思い、この人と仕事したら面白いだろうなとか。恋の対象が変わりつつある年齢かも。しかも恋ではなく、家族愛、仕事愛、モノ愛という感じで、より深いものへ移っているような。                                                                                                                                                                                       

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History      中島 広行(なかじま ひろゆき)
1972年生まれ。夏秋冬春365日ビーチサンダルを販売する「げんべい商店」の5代目。小学校から大学時代までラグビー部に所属。ユニークなアイディアを次々に実現し、げんべいファンを確実に増やしている。
ビーチサンダル専門店 げんべい長柄店 三浦郡葉山町長柄855 http://www.genbei.com/  

げんべいさんのロゴマーク、かっこいいですよね。
これはホームページを作るとき、知り合いが作ってくれたんですよ。URLは、co.jpがとられていたので、バランスがいい.comにしたんです。義父も「いいねぇ」と喜んでくれました。そうしたら、「そういえば、うちにはこういうものがあるんだよ」って、むかし使っていたという曲尺の内側にサの文字を配置したマークを出してきてくれたんですが、それがまた味があって。なぁんだ、あったのかと思ったんですが、新しいロゴマークは周囲からも好評で。ロゴマークを胸元においたTシャツを作ったら想像以上に人気が出て、今ではいろいろなアイテムが増えました。
                                                  あ、私、Tシャツ買いました(笑)。どの色にしようか迷っちゃったんですよ。でもやっぱり、げんべいさんといったらビーサンですよね。
ありがとうございます(笑)。うちのビーサンは、1,000円という価格内で、最大限の作りをしていると思います。爪先が薄く、かかとが厚いソールなので、足にフィットするんです。大量生産すると、どうしてもソールはフラットにしがちなんですが、うちのビーサンは長く履いてもらいたいので、ずっとこの作り方できています。ロゴを使ったアイテムは増えていますが、ビーサンに関しては新しいものを出すということはせず、お客様に長く愛されるもの、飽きられない定番ものを作っていきたいと思っているんです。扱うものはずっと一緒、それをいかにもっと知ってもらうか、もっと履いてもらうか、それが一番大事だと思っています。よくある2012年モデルとか、そういうのはまったく頭にないんですよね。ただ何もやらないのは飽きられてしまうと思うし、周りからの興味もなくなってしまうと思うので、企業さんとのコラボをしようとか、デザインコンテストをしようとか、そういう仕掛けはやっていきます。
                                                  コラボに関して、初めて声を掛けてくれたのがビームスさんなんですね。
そうなんです、2004年でした。最初はお断りしたんです。「コラボしませんか?」って言われて、そもそもコラボがよくわからなくて(笑)。それになんでうちのビーサンを作ることに価値があるんだ?? うちでやって売れるのか??って(笑)。当時、そんな感じだったんですが、翌年また来てくれて「やれる範囲からやってみましょう」と言ってくれて、それで渋谷の一店舗から始まったんです。それからですね、いろいろな企業さんからお声掛けしていただいています。面白いんですよね、うちはビーサンだから、アパレル業界さんしか取引がないだろうと思っていたら、鉄道会社や車など、いろいろな業種と仕事ができるのがまた楽しいんですね。
                                                  世界が広がっていきますね。さきほどお話に出て来たデザインコンテストとは?
これがまた面白いんですよ。ビーサンをキャンバスに見立てて、コンテストに参加してくれた企業さんのイメージを学生たちがデザインするのですが、優秀作品は商品化して販売します。これもいろいろな企業さんとのコラボの蓄積があるから声を掛けることができるんですよね。たとえば、昨年は母校の関東学院大学の学生が、コンテストに参加してくれた神奈川にある7つの企業をイメージしてデザインをしたり、福岡や大阪でも同じ仕組みでコンテストをしました。いろいろな企業さんに声を掛け、つなげて企画が出来ていくのは面白いですね。ただ、本当に忙しい(笑)。今年もあれこれと面白い仕掛けを考えています。
                                                  仕掛けや企画はどういう時に浮かぶのですか?
人と話している時によく出てきますね。店にいる時もあれこれ考えています。大学時代の友人や実家の家族からは「おまえが?」って言われますよ(笑)。自分は三人兄弟の真ん中で、兄が公務員、弟はサラリーマンなんです。真面目な兄から「アイディアが尽きることないの?」ってよく言われます(笑)。自分はアイディアが尽きるっていうのが、逆にわからないんですよ。
                                                  苦しんで練り出す企画じゃないからユニークなんですね。
そうかもしれません。税理士の方にも、もっとひろげればどうだろうとか、コラボももっとやったほうがいいんじゃないかって言われるんですね。ただ、自分の感覚のなかで、やっぱりお客様に飽きられてもいけないし、目先の売り上げじゃなくて、長く続けたいから抑えるものは抑える。それは取材であってもそうです。コラボにしても何でもかんでもやるのは違うのかなと。商品を売って、お金が入ってくるだけなら楽なのかもしれません。でも、それでは面白くない。やっぱり、百貨店さんだったら、百貨店限定の商品を作りたくなります。そういう仕事をするためには、やっぱりその相手というか、人を見てしまう。“思い”がある人と仕事をしたいと思うんです。そうすると、どうしても第一印象で人を見てしまうところがあるんですよね。
                                                  取材する側として緊張しますね。中島さんは「げんべい」が、これだけ不動の位置になっても、落ち着いているというか、浮き足立った感じが全然ありませんが…。
今だから、周りから “これだけビーサンがあるし”とか、“これだけ歴史があるから”とか、“葉山にあるし”って、うちがうまくいった理由をあとづけして言われることがあるんです。でも結局、ビーサンを一年中売るということを今まで誰もやってこなかったんですよね。一年中、ビーサンを売る店、というスタンスになるまでには自分なりに迷いや葛藤の時期がありました。人に相談したこともありますが、最終的には自分で考えて、行動して、それで成功なり失敗なりしない限りわからないというのが、当時わかったんです。最終的には全部自分でジャッジするしかないって考えています。そうでなければ、こういう店にはならなかったと思います。
中島さんが葛藤されていた時期、家族の方からアドバイスなどされましたか?
ビーサンだけでは食べていかれないんじゃないの?と言われたこともありますが、当時はもともと売れていなかったんです(笑)。義父は何も言わずに、自由にさせてくれました。それでもうまくいかない時、やっぱり葛藤とか不安があるなかで、おばあさんの存在は大きかったですね。散歩がてらにふらっと来て「どんな感じ?」と、ひと声掛けてくれるのが、すごく嬉しかったです。期待して気にかけてくれているんだと感じることができましたね。
                                                  そうした時期を経て、今があるんですね。
いま中学一年生の息子がいるんですが、小学校の卒業式でのひとことスピーチで「店を継ぎたい」と将来の夢を話してくれたんです。うれしかったですよ。自分は昔から、子供に対して店を継いでくれとは言いたくなかったんです(笑)。継いでくれと言わざるおえないのは、それは親がやっている商売に魅力がないからだと思うんですよ。そうじゃなかったら、自然と「やらせてください」になると思うんです。だからそう言わせるために頑張ろうと、それが昔は自分のモチベーションだったんです。子供が物心つくまでには、胸はれるように「うちはげんべいなんだぞ」と言ったら、周りが「すごいね!」と言ってもらえるようになるために頑張ろうって思っていました。
                                                  中島さんがやってきたことが、お子さんから見てかっこよく映っていた証拠ですね。
そうだったらうれしいですね(笑)。でも、昔はお手本がなかったので悩んでいました。自分は何を見習ったらいいのか、自分のやっていることは正しいのかわからなくなったりもしましたよ。ビーサンを一年中売りますって言って、それに類似する店があるのか?とか。けっこう、自問自答しましたね。今でもお手本があるかと言ったら、ないんですけれどね(笑)。でも考えて判断して経験し、良いこともあれば痛い目にもあって、強くなりました。ブレなくなったと思います。嘘くさいって言われるかもしれないけれど、自分はお金儲けにあまり興味がないんです。かつて苦労した時、人間コレだけあれば食べていかれるというのを実感しているからだと思うんです。それに、先にお金ありきで動くと面白いことができないんですよ。なにかやったことに関して、あとあとお金になればいいという気持ちです。葉山で、家族でやっている店がどこまでできるのか、気づいたら世界を相手に商売していたなんて面白いですよね。ビーチサンダルだったら2番ではなくて1番になりたいですし。だからここで満足というのはないです。ゴムの農園も欲しいし、素材から工場から売るところまで全部やりたいですね。
                                                  最後に、2012年の予定など教えていただけますか?
今までビーサンを作る過程で出るゴミは廃棄しておしまいだったのですが、大学時代のラグビー部つながりで、そうしたゴミをエネルギー源に変える企業とつながりました。また、履き古したビーサンもエネルギー源になるので回収ボックスを作って集めていきたいと思います。そうした社会貢献をしながら、ビーサンのデザインコンテストも継続したり、コラボをしたり、店舗も新しくなったので、しっかりそこで頑張っていきます。                                                                                                   

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カラフルなビーチサンダルが勢揃い。ずらりと並ぶ色の華やかさに圧巻。色彩豊かなビーチサンダルを見ていると、ファッションに合わせて揃えたくなる。夏が待ち遠しい!

                                                           

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駐車場を広くとり、店内もバリアフリーになった新しい店舗(げんべい長柄店)の入口。げんべいのビーチサンダルは昔からソールと鼻緒に工夫がされているから足に優しい。ぜひお店に行って試してほしい。                                                                                                                                              

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「iPhoneとは別に、手帳が大好き」という中島さんの新しい手帳を見せてもらった。 “長期目標(2022年)50歳 ビーサンで世界一! 世界から認知されるブランドに!”と記されている。                                                                                                                                                        

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ビーチサンダル以外にも、ロゴマークをあしらった様々なアイテムが並び、見ているだけでも楽しい。                                                                                                                                   

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1号店の写真。この頃はビーサンだけではなく、浮き輪や虫取り網などが店頭に並んでいた。                               

2012/01/20

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